~DIYでフレットを取り付けたまま細く削ってクラウン幅を加工/JimDunlop6100と6105の中間の幅に変えてみた~
フレットの頂点が平たくなると 普段 私はダイヤモンドやすりを使って 三角おにぎり状に手作業で整形して頂点出しのメンテナンスをしています。
今回はフレットを指板に付けたまま リューターで削って 幅を細くする無謀なチャレンジをしてみました。
フレットの太さや高さによって何が変わるの?
フレットが太いと音が太くなるとか、高さがあるとチョーキングがし易かったりするけど、メリット・デメリットがあるんだよ
フレットの太さと高さの関係とそれぞれの特徴点
フレットが太い場合
・弦振動の帯域が広がって低音域の振動も伝わるので、音が太く深く感じる
・背の高いフレット製品が作れる(フレット高には、メリット・デメリットあり↓)
メリット)チョーキングがしやすい、弦を軽く抑えても音が出る感覚がある
デメリット)指が引っ掛かってスライド(グリッサンド)しにくい
・強く抑えるとシャープする
・フレットを消耗すると、弦の接触面が広くなるので、サスティーンが悪くなりがち
・フレット間の幅が狭くなるので、指運びが多少窮屈になって音詰まりが出ることがある
フレットが細い場合
・質量が少ないので、弦の響きが高音特性に傾く。細めの音質になる
・フレットを消耗しても 幅が細めだと弦との接点が比較的小さく済むのでサスティーン的には有利
・フレットの高い製品が作れない(JimDunlopの6105は幅が細めの2.29mmで 高さが1.40mmもあるが これが限界か… )
⇒フレットが低いと…
・指板に指が触れてチョーキングに支障を感じる場合がある
・指の引っ掛かりが少なく上下に動かしやすい
・強く押弦してもシャープしにくい(音痴になりにくい)
・フレット間に余裕があるので、指運びはし易いが、フレット高が低いものが殆どなので、押し弦をしっかりする必要がある
※フレットの形状にはメリットデメリットがあるが、太さと高さの相関関係をバランスよく持った JimDunlopの6105(幅2.29mm 高さ1.40mm)に類するサイズがお薦めということになる (今回はフレット交換はしません…)
サウンドハウス/ジムダンロップ6105フレット交換のリスク
フレット幅を小さくしたいのであれば、上記のような別サイズの既製品に交換するのが常識です…
私の使用している’79年製 Greco SV-800 は、もう40年以上所有していますが、昔ジャンボフレットが流行していたこともあり、すでにDIYでフレット交換してあります。
既製のフレットは標準的な物だったので、抜き取った後の指板の溝は、太いジャンボフレットを打ち込んでも抜けることはなく、作業に支障はありませんでした。
しかし、もう一度フレットの交換・打ち換えをするにあたっては、すでに幅が広がった溝を一旦埋めて切り直しする必要が出てきます。
頻繁に使うわけでもない専門工具を調達するには、DIYの限界でもあるため、フレットを指板に付けたまま削れないかという、些か乱暴なやり方を対案にしました。
具体的には、指板に傷が付かないよう、市販のステンレス製の「指板プロテクター」で指板を保護し、リューターを使ってフレットの両側面を削るという方法ですが、どちらにしてもリスクはあります。
考えた結果、後者の選択でも多少の自信があったので、実行することにしました。
フレットの切削作業
今回はハイリスクを挙行しましたが この記事は事例報告なので、皆さんにオススメするものではありません。
施工の概要
ノートにプランを書き出して、工程に見落としがないか確認
ギターメンテナンスで私が毎回使う必需品
保有するギターの SV-800 に合わせて自作したネックピローは、作業中のボディーの安定化と安全に欠かせない必需品です。
近視に加え、年齢的に老眼・乱視がかなり進んでいるので、ヘッドセットの拡大鏡を使います(笑)
作業開始
試し削り
いきなりリューターで削ると、思いもよらない傷がつくかもしれません…
まず、ダイヤモンドやすりでフレットを削ってみて、フレットの強度を手元に浸み込ませます…
画像に映っているステンレスの板は、フレット作業にいつも出てくる「指板プロテクター」。
消耗品なので安い500円程度(大小二枚組)のものを使っています。
次は、いよいよ本命の電動リューターによる切削開始です(お勧めしませんが…)
電動リューターによる切削本番
電動リューターのヤスリ刃は、いろいろ検討したのですが、最も指板を傷つけないであろう…三角柱のヤスリを選択しました。
リューターを回転させます。
回転数はパワーをかけると、ヤスリ刃が踊って修復できないダメージを周囲に与える可能性があるので、一番遅くします。
画像の上下にヤスリを動かしながら、削り面が均等になるように整形します。
この作業をしている時に、歯医者さんを思い浮かべてました…。
歯医者さんは平面に削る時にも三角柱のヤスリを使っていたよなぁ…。(記憶が曖昧)
この特殊な作業で、指板プロテクターに かなりなダメージを与えるので、作業が終わったら先ほどの500円の物で買い換えて、今後のメンテナンスに備える必要がありますね。
さて、すべてのフレットをひと通り削ったところで、電子ノギスで採寸します。
電子ノギスでチェック
このジャンボフレットは、クラウンが3.00mm幅だったのですが、過去に2.76mmまで手作業のヤスリ掛けで削ったことがあるんです…その時に指板に傷をつけてしまって、今でも少し残っていますが、今回はノーミスです。
そういうわけで今回は、2.76mmスタートで、目標が2.60mmにしていますが、前掲の作業プランのノートにあるように、指板プロテクターの厚みの分、クラウンの裾野が残りますので、計測値は幅広の値が出てしまいます。
1つのフレット幅を何回か測るのですが、ノギスを指板の板面まで深く入れると作業前の2.76の数字が出ます…それは納得…、少し浅くすると、どのフレットも2.65~2.68の間の値が複数出ました。
全部のフレットを診ても、太さの違いや乱れはなく、100分の1ミリは、演奏上の手の感触としては、許容範囲なので、リューターを使った作業は終了とします。
※その後 再度削ってクラウン山の中腹の値が概ね2.47mmになりました。(2021.9.15)
粗面の平滑化
次は金属たわしで粗面を平滑化していきます…ここでも指板プロテクターを使います。
指先の感覚で、引っ掛かるところはないか、目をつぶって探りを入れながら磨きます。
全部のフレットが磨きあがったら、クリーニング工程へ。
クリーニング
歯ブラシを使って木目などの隙間に入った金属片を取り除きます。
次に、私の場合は、揮発性の潤滑剤をティッシュに浸み込ませて、見えないくらいの粉末をゴシゴシ取り除きます…この段階でティッシュは真っ黒になります。
次に新しいティッシュで乾拭き…ティッシュに汚れが付かなくなるまで、しつこく拭き上げます。
ティッシュに汚れが付かなくなったら…今回は蜜蝋を塗ります…このためにしつこく汚れを除去していたのです。
汚れているのに蜜蝋を塗ったら、汚れも一緒に付着定着してしまいますからね…。
指板のメンテナンス《蜜蝋の塗布》
私は、様々なDIYを行う時、指先の感覚に頼ることが多いので、蜜蝋も指で塗り込みます。
指板の状態がよくわかるんです…。
今回使った蜜蝋
サウンドハウス/ねこだまり工房 自家製クリア蜜蝋ワックス最後に蜜蝋を均等に伸ばして定着させます。
作業終了
仕上がりはこんな感じです。
※今回作業で 指板プロテクター が磨耗してダメになりました…
試し弾き
フレット幅を削った後の 試し弾き…全音域でハリのある音質になり、特に ハイフレの滑舌が良くなったと思います。
弾いてわかった主な改善点
①ハイフレの滑舌が良くなった
②プレゼンスが◎
③不正確な押弦による音詰まりが少なくなくなった
④クリア音で艶が出てきた
まとめ
フレットの頂点が平たくなると 普段 私はダイヤモンドやすりを使って 三角おにぎり状に手作業で整形して頂点出しのメンテナンスをしています。
今回はフレットを付けたまま リューターで削って 幅を小さくする無謀なチャレンジをしてみました。
フレット幅を小さくしたいのであれば 既成品のフレットを使って交換するのが常識です…。
今回はハイリスクを挙行しましたが この記事は事例報告なので、皆さんにオススメしようとするものではありません。