~広がったフレット溝の補修/接着剤を使って色々な方法で試してみた/梱包テープの蝋で衝立に活用/DIYフレット交換のやり直し~
以前 自分でフレット交換したんですが 中央部に浮きが出てしまいました
40数年の枯れたローズウッド指板なのに 溝の補修が甘かった…思ったより内部が痩せてました…判断ミスです
また、ネックのエッジを丸めてるんで フレットの端の浮きを意識し過ぎて R付けの調整ミスもあったと思います…う~ん やり直しのリスクって大きいなぁ…
今回は 作業ミスの反省を兼ねた投稿です
状態チェック
これまで 3弦や4弦が時々ビビるなぁ…と思っていたのですが 支障になる程ではありませんでした
しかし 中央部を強く押すとフレットが動くようになっている事に気付いたんです…浮いてます!
早速 全体のフレットを外して 溝を確認しました
フレット溝の内壁は 指板の断面なわけですが この画像からは よくわかりませんが 40数年前の物なんで 肉眼で覗くと目が荒くなってます
フレットのスタッドが しっかりと喰い込むように補強したい…
すぐにはフレットを接着する方法を結論にしたくないのです…
乾燥後にギュッと差し込みたい… 幅が狭いんで上手いやり方を考えないと失敗しますね
そこで 溝の中でタングやスタッドが接触する部分をどう補強することが出来るか チャレンジすることにしました
《トラブル 発生!》
溝の状態を確認するため 掻き出しクリーニングしてたら バインディングに引っ掛けて割っちゃいました
ジャパンビンテージなんで 既に あちこち割れていて 気にしないで貼り付ければよいのですが 破片を探すのに えらく時間がかかってしまいました…
小っちゃいポジションマークは 飛び散って見つかりませんでした(元々入ってなくて透かしだったのかも)…後で何かで代用します
施工方針
指板の枯れ や 以前のフレットタングが太かった事など 溝幅が広かったのは明らかなので 全て打ち直しすることにしました
・掻き出しの刃を研いで0.4~4.5㎜にして使用
・溝に衝立を入れて タングが溝に接触する深さを接着剤と木粉で補強
(案1) タイトボンドと木粉を混合
(案2) エポキシと木粉を混合
(案3) 瞬間接着剤で木粉を重層充填
・指板の補修は 古い木製サンディングブロックを表裏が”10&”12のものに新調
・フレット規格の見直し→ タングが長め、幅0.5㎜でもスタッドが大きい物、Rが付いている物
作業開始(要点)
DIYによるフレット交換の工程については 過去記事で取り上げたので省略しますが 今回は特徴点を掲載します。
指板のR調整を入念に
今回の フレット浮きの原因の一つには 指板のRとフレットの曲がりがマッチしていなかったことがあります
フレット打ちはRより少々曲げて打ちますが 前回施工時に この作業を誤っていたのだと思います…
最近のフレットは硬性が高いので 打ち込みで指板Rの形状にフレットが曲がって馴染みにくいんですね…
ちなみに 古い指板は ネックエッジ付近が痩せてることが多いようです
このため、やり直しの指板調整はサンディングブロックを新調して チェックと研磨の繰り返しを何日もかけて行いました。
サウンドハウス/サンディングブロック衝立(ついたて)を使ってみる
接着剤がくっつかないようにするには テフロンの板状の物が良いのですが リードになる溝幅を少しでも維持したいので 梱包テープのツルツル面が外になるように折って使用しました
タイトボンドでテストしたところ、水玉状に はじきました(エポキシも硬化後に簡単に剥離しました)
厚さは電子ノギスで計りながら 三つ折りの0.4㎜に作りました(もう一度折ると0.5を超えます)
その1 木粉入りタイトボンド
溝に衝立を入れて 隙間にローズウッドを混ぜたタイトボンドを充填してみました
吸い込みには 粘度が緩くないといけません…隙間への吸い込みを見ながら濃度を調整して注入しました
《配分》ローズウッドの木粉を耳かき山盛り+タイトボンドはワンプッシュ+水一滴
ニードルや爪楊枝で注入…僅かな隙間しかありませんので 衝立を動かしながら吸い込ませていきます
乾燥後 衝立を引き抜いてみると パリパリになった皮が出てきました…圧着できないのでタイトボンドでは失敗しました
その2 エポキシと木粉(衝立の手順変更)
硬化までの間 圧着できないので 付着させるには粘性と僅かな弾性が必要だと思います
そこでエポキシを使ったところ しばらくは上手くいきました…
《配分》ローズウッド1+Aエポキシ1+Bエポキシ1
衝立の側面に 先に付着させて溝へ挿入
これは 溝の底部に接着剤が溜まらないようにするため 且つ 溝の壁面に擦り込み付着させるためです
溝掻きを使うと 甘皮が剥がれますが 全体的には よく付着しました…なのですが
その後 作業の都合上 ネックを逆反り・順ぞりさせる工程があるんですが その段階で塊が剥離してきました
その3 瞬間接着剤と木粉
オーソドックスなやり方ですが この中では最も定着が良かったです
衝立の隙間に瞬間接着剤を垂らして ニードルなどで中に誘導・浸透させました
衝立は くっつく前に抜きますが もし くっついてしまっても 紙なので掘り出しは出来ます…隙間が細いので大変ですが…
次に 溝の開口部付近に再度 瞬間接着剤を付けて 木粉を載せ 平たいもので溝の中に押し込んでいきます
これを繰り返して フレットのスタッドが食い込む位置(0.5㎜程度下)に着床できればベストですね
結果、オーソドックスなやり方が一番効果がありました
採用フレットの見直し
溝は逆に かなり狭くなったので 打ち込みには0.5㎜未満の物でないと入りにくくなりました
しかし 接着した木粉の欠損を考慮する必要があるので 脚(タング)は長さが1.7㎜程度の長い物、スタッド(引っ掛け)が大きい物 を探しました
選定したのは Jescarの51100。クラウン幅2.5㎜ 高さ1.3、タング幅は0.5ですが スタッドを合わせると0.9もあり 脚の長さは1.75あります
サウンドハウス/JESCAR 51100これならば 脆弱な溝の状態でも 定着が期待できそうで 適度なR(9.5~10インチ程度)も付いているのが有難い
今回は フレッドのRと指板Rの徹底(最近のフレッドは硬いので 打ち込みによって 指板の形状に合わせて曲がりにくい事が教訓になってます)に特に注意しました
作業終了とまとめ
余談ですが…フレット交換をすると ナット高が合わなくなるものですが 工具箱にあったジャンクナットを付けてみたら偶然にもピッタリでした…部品は捨てずに再利用するのが良いですね
サウンドハウス/グラフテック ナット擦り合わせ”ありき”ではなくて まずは弾いてみて 特定フレットのビビりや音詰まり等の支障がない限りOKにしたいです
2~3本 気に入らない箇所があったのですが 再度のハンマリングで解消しました
打ち込みの際にフレットの曲げ加工が殆ど必要なかったことが幸いしたのだと思います
とりあえず作業終了です…私のジャパビンギターは私と同じく傷んできましたが 予後が順調であることを願うばかりです